退職の切り出し方|未経験の職種へ移るときの伝え方
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夕方の休憩室で、自動販売機の前に立ったまま何も買わずに席へ戻る。今日の帰りに言おうと決めていたのに、課長の周りにまだ人が残っている。また明日でいいか、と思ったのが三度目の火曜日だった。
次の会社はもう決まっていて、入社日の希望も伝えてあるので、あとは目の前の一人に言うだけなのですが、その一言だけがどうしても出てきません。
切り出せない理由は、たいてい言葉が見つからないからではなく、言ったあとに何を言われるかが読めないからです。しかも今度の行き先はこれまでと違う職種ですから、辞める理由だけでなく、なぜそちらへ行くのかまで説明させられる場面が出てきます。
この記事で扱うのは、いまの上司に対して何をどの順番で言うかだけで、切り出す前に決めておくもの、最初の一言、言ったあとに揺れないための構えまで並べます。
面接で話す言葉と、上司に言う言葉は別もの
辞めると決めたあと、多くの人がまず調べるのが退職理由の伝え方だと思います。ただ、そこで出てくる情報には、性質のまるで違う2つが混ざっています🗯
一つは、応募先の面接で話す退職理由です。ここは前向きに変換する必要があって、不満をそのまま出すと選考で不利に働きます。
二つ目が、いまの上司に言う言葉のほうで、相手はこちらの仕事を知っている人で、しかも引き止める立場にいるため、面接で求められるものとは方向がまるきり逆です。
面接で退職理由をどう話すかは別の記事に分けてあります。そちらを見てください。この記事で扱うのは、いまの職場に対してどう伝えるかのほうです。
退職理由の伝え方 ネガティブな本音を、嘘をつかずに変換する手順
この2つを混ぜると、どちらも中途半端です。上司に向かって面接用の前向きな言い方をすると、それなら社内でもできるはずだと返されますし、逆に面接で本音をそのまま出せば、不満で動く人だと受け取られます。
覚えておきたいのは、上司に対しては理由を作り込まなくていいということです。丁寧に説明するほど、そこが話し合いの入口になっていきます。
辞める理由が後ろ向きでも問題ありません。パーソルキャリアが出している転職理由の調査では、肉体的または精神的につらいという理由が19.2%で、5人に1人ほどが同じところで会社を離れていました🚏
出典:パーソルキャリア「転職理由ランキング【最新版】」20〜59歳の正社員978人・複数回答(8位)。
つまり、つらいから辞めるというのは隠すような理由ではないんです。ただ、それを上司に細かく説明する必要があるかどうかは、まったく別の話です。
説明しないことと、嘘をつくことも別です。聞かれていないことを自分から広げない、というだけの話で、後ろめたさを持つ場面ではありません。
未経験の職種へ移るときだけ、引き止めの形が変わる
同じ業界の同じ職種へ移る場合、辞めると言ったあとの会話はわりに短く終わります。給与が上がるのか、通勤が楽になるのか。そのあたりを聞かれて、そうかと言われて終わる。
ところが未経験の職種へ移ると、話の向きが変わります。そんな分野で通用するのか、給料は下がるんじゃないか、いまの経験が無駄になるぞ。心配の形をした引き止めが出てきます🧷
ここで大事なのが、その心配にいちいち答えないという選択です。答えるほどこちらの情報が増えて、そのまま相手の材料になっていきます。
詳しく話さないほうがいいものが3つあって、行き先の会社名、次の年収、そしてなぜその職種を選んだのかという動機です。
会社名を言えば調べられますし、年収を言えば、うちならこうできるという条件の話に入っていきますが、動機まで話したときがもっとも危なくて、それなら社内の異動でも叶うのではないかと返す余地が生まれます。
代わりに置くのは、決まっているという事実だけです。次が決まっていること、入社日も決まっていること。この2つを伝えれば、話し合える範囲はかなり狭くなります。
年収については聞かれても答える義務がなく、未経験の職種へ移ると一時的に下がることが多いので、正直に答えると、それこそもったいないという話に持っていかれます。下げ幅をどう見るかは別の記事で数字を出してありますから、気になる場合はそちらを先に読んでください。
職種の中身を言わないのは隠したいからではなく、いまの上司はその職種の専門家ではないので聞いたところで判断ができませんし、判断できない相手に説明すると、心配だけが増えて話が長くなります。
言い方としては、別の分野に移りますというところまでで十分で、しつこく聞かれたときも、まだ入社前なので詳しくは控えますと返せますし、それで失礼になることはありません📬
逆に、ここだけは正確に伝えたほうがいいものもあって、退職を希望する日と引き継ぎに使える期間の2つは、相手の段取りに直結するのでぼかすと面倒が増えます。
日付をあいまいにしたまま話を進めると、相手は自分の都合のいい時期で計算を始めます。あとから来月末ですと言い直すことになれば、そこで初めて揉めるので、最初の一回で言い切ってしまったほうが早いんです。
業界だけは聞かれたら答えて差し支えなく、業界の名前だけでは相手が引き止めの材料を組み立てられないので、そこまでは開いておいて、職種と会社名の手前で線を引けば、会話が止まらずに済みます。
誰に、どの順番で言うか
最初に言う相手は、直属の上司です。ここを間違えると、話の主導権がこちらから離れます。
仲のいい同僚に先に打ち明けたくなる気持ちは分かりますが、そこから上司の耳に入ると、本人から聞いていないという不満が先に立ってしまいます。伝える順番そのものが、そのあとの扱いを決めてしまうんです。
- 内定と入社日を確定させる口約束ではなく、書面で内定を受け取ってから動きます。
- 就業規則の退職の項を読む申し出の時期や手続きの定めを、自分の会社の規則で確認します。
- 直属の上司に時間をもらう立ち話ではなく、15分でいいので別の場所で話します。
- 周囲への共有は上司に任せる誰にいつ伝えるかは、上司の段取りに合わせます。
ステップ1を飛ばす人を、よく見かけます。内定が出そうな雰囲気だけで切り出すと、話が流れたときに戻る場所がなくなります。
ステップ2で読むのは就業規則の退職の項で、上司の前で日付を出せるかどうかがここで決まるので、切り出す前に一度は開いておきたい部分です。
申し出の時期に決まりがあるかどうかは、会社ごとに違います。だからこの記事では日数を書きません。自分の規則に書かれている条件だけが、自分の条件です。
置き場所が分からないなら、総務に聞くのが早いです。社内の制度を調べていると言えば、それ以上は詮索されません。
退職の項で見るのは3つです。申し出の相手が誰になっているか、決まった様式があるか、そして申し出の時期に定めがあるか。この3つが分かれば、上司の前で迷う場面は残りません。
様式が決まっている会社だと、口で伝えたあとに書類を出す流れになるので、先に様式の名前だけ見ておいてください。どこに出すのかと聞かれたときにも止まりませんし、こちらが段取りを把握している状態のまま話が進みます。
あわせて見ておきたいのが、職場の繁忙期です。年でもっとも忙しい月にぶつけると、退職そのものへの反対というより、この時期だけは無理だという話で日程が延びていくので、可能なら山を一つ越えたあたりを狙ってください。
とはいえ、繁忙期が年の半分を占める職場もあります。その場合は待っても条件が変わりませんし、入社日から逆算した日程のままで進めてしまって構いません。
ステップ3で気をつけたいのが、場所と時間です。廊下やラインの脇で言うと、相手が受け止める体勢に入っておらず、あとから聞いていないことになりかねません。
会議室が取れない職場なら、始業前や終業後の10分で十分です。人が通らない場所で、相手が座っている状態を作れるかどうかだけが条件です。
ステップ4は、意外と差が出るところです。自分から周りに広めると、上司が把握する前に噂が回って余計な角が立ってしまうので、誰にいつ伝えるかは上司の側に預けてしまったほうが穏やかに進みます🫱
この4段を、いつからいつまでに収めるかという全体の日数感は、準備期間の記事のほうに置きました。
最初の一言を決めておく
切り出せない時間が長引くのは、言う内容が決まっていないからではなく、最初の一言が決まっていないからです。そこだけ用意しておけば、あとは相手の反応に合わせて進みます🪢
ここで結果が大きく変わるのが、相談として言うか決まったこととして言うかで、転職を考えているんですがという言い方は相談になるため、考えている段階ならまだ決まっていないと受け取られます。
決まったことを伝えに来た人に対しては、相手も引き止める言葉を探しにくくなります。同じ内容でも、入口の一言でそのあとの30分が変わってきます。
工場の製造ラインで働いている人を想定して、2段に分けて置いてみます。まずは、時間をもらうときの言い方です。
お忙しいところすみません。退職についてお話ししたいので、15分ほどお時間をいただけますか。ラインが動いていない時間帯のほうがよければ、そちらに合わせます。
そのうえで、時間をもらった場で言うのがこちらです。
私事で恐縮ですが、来月末で退職させていただきたく、お話に参りました。次の勤務先は決まっております。引き継ぎは残りの期間で終わるように進めますので、日程のご相談をさせてください。
この例で意識してほしいのは、相談という言葉を使っていない点で、出てくるのはお話ししたいと、お話に参りましたの2つだけです。どちらも決まったことを伝える言い方になっています。
日程のご相談をさせてください、という一文も効きます。決めるべきことを退職そのものから日程のほうへずらしているので、相手の考える対象が自然に切り替わるんです。
逆に、言わないほうがいい一言もあって、ご迷惑をおかけしますがを先に置くと、迷惑だと自分で認めた形になり、そこから話が始まります。
謝るのは、日程が決まったあとで構いません。最初の一言に必要なのは、決まったという事実と、時間をもらいたいという依頼の2つだけで、それ以外は削ってしまって差し支えありません。
声が震えても、噛んでも問題ありません。伝わるのは言い方の上手さではなく、決めてきたかどうかのほうです。
もし相手が黙ってしまっても、こちらから間を埋めなくて大丈夫です。沈黙のあいだに言葉を足すと、たいてい余計なことを言ってしまうので、相手が話し始めるまで待つくらいでちょうどいいです。
それから、最初の1回で全部が決まることは、あまりありません。上に確認すると言われて、その日は日程も決まらないまま終わるのが普通なので、1回で片付けようとしないでください。伝わったという事実が残れば、その日の役目は果たしています。
言ったあとに揺れないために
切り出したあと、条件の話が出てくることがあります。給与を上げる、部署を変える、担当を軽くする。ありがたい話に見えますが、その場で答えないでください。
言うのは一言で済みます。ありがとうございます、少し考えさせてください。それで持ち帰れますし、相手も待ちます。
持ち帰ったあとに何を見て決めるかは、引き止めの記事のほうに整理しました。
出された条件をどう扱うかという話は、それだけで長くなるので別に分けました。この記事では、切り出す前にこちらの側を固めておくところまでにします。
固めておくのは1つで、辞めたあとに何をしたいのかを自分の言葉で言えるかどうかです。上司に説明する必要はありませんが、ここが曖昧なまま切り出すと、条件を出された瞬間に足元が緩みます。
確かめ方は単純で、30秒で言い切れるかどうかを見れば済みます。言いよどむところが残っているなら、そこがそのまま突かれる場所になります。
もう一つ、在籍が短いまま次へ動く場合の見せ方も、気になるところだと思います。回数の扱いは別にまとめてあります。書類を作る前に目を通しておくと迷いません。
転職回数が多いと不利か 回数ではなく「つながり」で見せる整理のしかた
そこを一人で固めにくいなら、外の人に一度話してみるのが早いです。第二新卒や既卒、フリーターからの就職を扱っているところなら、学歴や職歴の少なさを前提に話が進むので、そこから説明し直す手間がかかりませんし、年齢の上限が決まっていないので20代に限らず使えます。
切り出す前に、外の人へ一度話しておきたい方へ
第二新卒エージェントneoで話を聞いてみる※第二新卒エージェントneoは、第二新卒・既卒・フリーター・中退・高卒から正社員を目指す方に向けた 無料のエージェントです。経歴の説明から始めなくて済むので、辞める前の相談先としても使えます。
どこに相談するかは、年齢や経歴で対象が変わってきます。並べて見たうえで決めるのが安全です。
よくある質問
退職を切り出すのは、内定が出てからでいいですか?
書面で内定を受け取ってからにしてください。口頭で伝えられただけの段階で切り出すと、条件のすり合わせが残っていた場合に戻る場所がなくなってしまいます。内定通知を受け取って、入社日の希望も伝わっている状態まで来てから動けば、途中で止まる要素はほとんど残りません。
メールやチャットで伝えてもいいですか?
最初の一言は口頭にしてください。文字で送ると、上司が受け取ったタイミングをこちらが選べないので、忙しい最中に読まれて後回しにされることがあります。ただ、時間をもらうための依頼だけをチャットで送るのは問題ありません。お時間をいただきたいので15分ください、という依頼までを文字にして、中身は会って話す形が動きやすいです。
上司との関係が良くないので、その人を飛ばして人事に言いたいです。
気持ちとしては分かりますが、順番を飛ばすと戻されることが多く、人事に先に伝えても結局は直属の上司に確認が回るので、本人から聞いていないという形が残ってしまいます。どうしても直接話すのが難しい事情があるなら、人事に相談したうえで同席してもらえないか聞いてみてください。
「次はどこに行くのか」と何度も聞かれたら、どうしますか?
入社前なので詳しくは控えます、で通せます。同じことを繰り返し聞かれても、答える義務はありません。答えないことで気まずくなるのを避けたい場合は、落ち着いたらご連絡しますと添えておくと、拒否ではなく保留として受け取られます。それでも引かない相手には、業種だけを答えて職種はぼかす、という線を自分の中で決めておくと楽です。
まとめ:言う日を、先にカレンダーに置く
上司に言う言葉と、面接で話す退職理由は別ものです。上司に対しては理由を作り込まないほうが、話が短く終わります。
未経験の職種へ移るときは、行き先の中身と年収と動機を詳しく話さないでください。判断できない相手に説明すると、心配の形をした引き止めが増えるだけです。
順番は、内定を書面で受け取る、就業規則を確認する、直属の上司に時間をもらう、周囲への共有は上司に任せる。この4段で動きます。
最初の一言は、相談ではなく決まったこととして置いてください。そのあとに日程の相談へつなげると、話す対象が退職そのものから日程のほうへ移ります。
いちばん効くのは、言う日を先に決めてしまうことです。来週の水曜日の午後、と紙のカレンダーに書いておけば、言葉を探す時間はそこで終わって、あとはその日に言うだけの話になります。