未経験から経理へ|簿記は必要か、先に触るべき数字はどれか

公開日:2026-09-18 / 更新日:2026-09-18 / 執筆:キャリアのナナメ相談所 編集部

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「未経験から経理を目指すなら、まず簿記2級」——調べていると、どこを開いてもそう書かれています。

ですが、この言い方は仕事の中身を一つにまとめすぎています。経理の仕事は1年のうちで変わっていって、毎日やることと、月に一度やること、年に一度やることが別々にあります。簿記2級の範囲がまとまって必要になるのは、年に一度の決算に近い部分です。

未経験で入った人が最初に触るのは、そこではありません。伝票を起こす、入金を確認する、経費精算をチェックする。手順の決まった毎日の仕事から始まります。

この記事では、経理の仕事を日次と月次と年次に分けるところから始めて、簿記の勉強と実務の重なり方、いまの仕事の中にある数字、そして入る順番までを整理します。

「簿記がないと経理は無理」は、どこから来たのか

この言い方が広まっているのには、理由があります。求人の集まり方です。

経理が含まれる事務・アシスタントの区分は、パーソルキャリアの調べで求人倍率が0.53倍でした。求職者1人あたり0.53件という意味なので、全職種をならした2.55倍と比べると、応募する側が多い職種になります。

出典:パーソルキャリア「doda転職求人倍率レポート」2026年6月・全国。

1つの求人に人が集まる職種では、選ぶ側は何かで線を引くことになりますが、そこで名前が挙がりやすいのが資格で、経理なら簿記がそこに当てはまります。つまり「簿記がないと無理」という話は、仕事の中身から出てきたというより、応募が集まる状況から出てきた面が大きいんです🧾

ただ、線の引き方は資格だけではありません。数字を扱ってきた経験があるか、指示された手順を守れるか、月末に作業が集中する働き方に耐えられるか。採用する側が見ているのは、そのあたりも含めた全体です。

実際、資格の欄を必須にしている求人ばかりではありません。歓迎欄に簿記と書いてあるだけの募集も多く、その場合は持っていなくても応募できるので、ここを読み違えたまま「まだ資格がないから」と見送っていると、応募できたはずの求人が毎週のように流れていきます。

資格だけで線を引くと、採用する側も困ることになるんです。簿記を持っていても、月末に作業が集中する働き方が合わなければ続きませんし、数字が合わないときに黙ってしまう人だと、そこで止まってしまうからです。だから面接では、資格そのものより、これまでの仕事の進め方を聞かれる時間のほうが長くなります。

それから、検索で目に入る求人が偏っているという事情もあります。経理の求人を探すと、経験年数を条件にした募集が先に並びますが、未経験を受け入れる枠は「経理アシスタント」「経理事務」といった別の名前で出ていることが多いので、経理という一語だけで探していると、入口にあたる求人が視界に入らないまま「やはり経験がないと無理だ」という結論に落ち着いてしまいます。

名前が違うだけで、所属する部署は同じです。担当する範囲が入口のぶんだけ切り出されているので、未経験にはむしろそちらのほうが入りやすい形になっています。

ここで一つ、この記事の守備範囲をはっきりさせておきます。資格を取るべきかどうかを職種を問わず考える話は別の記事で扱っているので、ここでは簿記1つに絞って、経理の実務と突き合わせていきます。

事務職全般の入り方についても別に記事があるので、この記事が扱うのは、そのうち経理だけです。同じ事務系でも一般事務と経理では求められるものが違うので、まとめて考えると判断がぶれます。

線の引かれ方が分かったところで、次は仕事そのものです。

経理の仕事は、1年のうちで中身が変わる

まず、何をする職種なのかを分けてみます。ひとまとめに説明されることが多いのですが、実際には周期が3つあって、それぞれ求められる知識が違います。

いつの仕事か中身未経験が最初に触るか
毎日伝票の起票、入出金の確認、経費精算のチェックここから入る。手順が決まっている部分が多い
毎月月次の締め、請求書の発行、支払いの処理数か月たつと、一部を任されるようになる
1年ごと決算、税務申告に向けた資料の準備すぐには任されない。数年かかることも珍しくない

1行目は、手順が決まっている作業になります。領収書を見て科目を選ぶ、通帳の入金と請求書を突き合わせる、経費精算の申請に不備がないか確認する。覚えることは多いのですが、判断そのものは型にはまっているので、慣れれば手が勝手に動くようになってきます。

ここで効いてくるのが、正確さと速さのどちらを先に取るかです。未経験のうちは速さを求めなくて構いません。金額を1桁間違えたまま進むと、月末の突き合わせで全部をさかのぼることになるので、最初は遅くても合っているほうが結果的に早く終わります。

2行目に入ると、締め切りが出てきます。月末から月初にかけて作業が集中するので忙しさに波があり、この波は会社の規模に関わらず出てくるものなので、求人票を見るときは残業の欄を月単位で読んでおいてください📅

波があること自体は、悪い話ばかりではありません。月の半ばは落ち着くので、休みを取りやすい時期がはっきり分かります。毎日同じ量の仕事が続くほうが合う人には向きませんが、山と谷があるほうが動きやすいという人もいます。

3行目が、いわゆる決算です。1年の数字をまとめて、税理士や会計士とやりとりしながら申告の資料を作っていく工程で、ここは判断が要る場面が多く、簿記2級の範囲が近いのもこの部分になります。

つまり「簿記2級が要る」と言われる作業の多くは、3行目に集まっています。入口は1行目なので、入るために必要な知識と、続けるうちに必要になる知識は別のものだと考えてください。ここを一緒にすると、入口に立つ前から2級の勉強に何か月も使うことになります。

会社の規模でも、任される範囲は変わってきます。大きい会社ほど担当が細かく分かれているので、未経験は1行目の一部から入る形になりますが、そのぶん教える体制も整っていることが多いです。

小さい会社だと、1人で全部を見ることもあって、入ってすぐ3行目に触れられる代わりに、教えてくれる相手が社内にいないことがあるので、未経験で入るなら、前任者が残っているかどうかを面接で確かめておいてください。

同じ事務系でも、一般事務との違いはここに出てきます。詳しい比較は事務職の記事のほうにまとめました。

未経験から事務職へ転職するには

簿記で学ぶことと、実務でやること

勉強と現場が完全に一致すると思っていると、入ってから戸惑います。かといって、まったく別物だと考えるのも違います。

重なっているのは、言葉です。勘定科目の名前、借方と貸方、締めという言い方。これが分かるだけで指示の意味が取れるようになりますし、逆にここが分からないと、教える側は用語の説明から始めることになるので、そのぶん手間がかかります。

重なっていないのは、手を動かす部分です。簿記の試験では仕訳を手で書きますが、実務では会計ソフトの画面から勘定科目を選ぶ形になりますし、試験で覚えるのは決算書を作る手順でも、毎日やるのは請求書と入金の突き合わせや、経費精算の差し戻しのほうです。

この差は、勉強が無駄だという話ではありません。ソフトが選択肢を出してくれても、どれを選ぶべきかの判断は自分でするので、そこで効いてくるのが勉強してきた内容になります。手で書けることより、画面を見て違和感に気づけることのほうが実務では役に立ちます。

だから3級は、入る前に取っておく意味があります。言葉が通じる状態を作るためのもので、そこまで時間もかかりません。一方で2級の範囲は、決算に近い部分が中心になるので、入ってから必要になったときで遅くないんです。

もう一つ、簿記を持っていても、会計ソフトの操作は別に覚えることになります。会社ごとに使っているソフトが違いますし、同じソフトでも社内の運用ルールは会社ごとに決まっているので、ここは入ってから教わる部分です。先に勉強しておく必要はありません✏

むしろ入る前に触れておくなら、表計算ソフトのほうが効きます。経理では合計や差額を出す場面が繰り返し出てくるので、関数を一通り使えるだけで、最初の数か月の負担がはっきり軽くなるからです。

では応募の前に何を持っておくといいかというと、3級か、勉強を始めている状態です。「取得済み」でなくても、学習中と書ければ、興味が本物だという説明にはなるはずです。

資格をどこまで優先するかという考え方そのものは、職種を問わず整理した記事があるので、迷っているならそちらも見てください。

未経験転職に資格は必要か 取るべきかの優先順位

ちなみに、勉強を始めてから応募するか、応募しながら勉強するかで迷ったら、後者を選んでください。求人は入れ替わるので、取ってから動こうとすると、その間に見ていた求人が閉じます。

いまの仕事に、触れる数字がある

経理につながる経験なんて一つもない。そう思っている人は多いのですが、探している場所がずれています。会計の知識ではなく、数字を扱ってきた事実のほうを探してください。

販売や接客なら、レジ締めがあるでしょう。飲食なら原価や発注の金額、廃棄の数を見ているはずです。一般事務なら請求書の処理や経費精算の受け付け、製造や現場なら材料の数量と作業時間の集計。どれも数字を合わせる作業です。

大事なのは、合わせるときに何をしていたかです。差が出たときにそのままにしたのか、原因を探して報告したのか。経理で求められるのは後者の動き方なので、そこを書けば実務に近い話になります🔢

前職は居酒屋のホールで、閉店後に翌日の発注数を決める作業を任されていました。仕入れた量と実際に出た量がずれる日が続いたので、日ごとの注文数を1か月ぶん書き出して、曜日と天候で分けて見直しています。そこから発注の基準を作り直したところ、廃棄する量が減りました。数字が合わない状態をそのままにしないことが大事だと考えているので、経理でも同じ進め方をしたいです

この例文には、資格の話が一度も出てきません。それでも経理の仕事とつながって見えるのは、数字が合わない場面での動き方が書いてあるからです。

書き方の型としては、担当していた作業、合わなかったときにやったこと、その結果どう変わったか、の3つを順に置いてください。3つ目まで書くと、やっていたという報告から、改善したという話に変わります。

「簿記を勉強中です」だけで止めると、意欲は伝わっても、働いている姿が見えません。勉強の話は一言添えるくらいにして、手を動かしてきた事実のほうを長く書いてください。

書くことが思い浮かばないときは、昨日やった作業を分解するところから始めると出てきますし、掘り出し方をまとめた記事もあるので、手が止まったらそちらを見てください。

未経験の職務経歴書に書くことがない人へ

数字を扱った期間が短くても構いません。半年でも1年でも、何をどう合わせていたかが書ければ材料になります🪙

未経験から経理に入る順番

ここまでを踏まえると、やることは4つに絞れます。

  1. 触ってきた数字を書き出すいまの仕事と前職から、金額や数量を扱った作業を全部挙げる
  2. 求人票の必須と歓迎を分ける簿記が必須なのか歓迎なのかで、応募できる範囲が変わる
  3. 応募と並行して3級を進める取ってから動くのではなく、動きながら進める
  4. 2級は入ってから考える決算に関わるようになってからで間に合う

つまずきやすいのはステップ2なので、そこだけ補足しておきます。求人票には必須の条件と歓迎の条件が分けて書かれていて、簿記が歓迎欄にあるなら持っていなくても応募できますし、条件を満たしていない状態になるのは必須欄にあるときだけです。

ステップ3の「動きながら進める」も、崩れやすいところです。勉強の時間を確保しようとして応募を止めると、受かる確率はゼロのまま日数だけが過ぎていきます。週に何件出すかを先に決めて、残りの時間を勉強に回す順番にしてください。

応募資格以外にも、求人票には読み方のある欄がいくつもあるので、まとめて押さえておくと無駄な応募が減っていきます。

未経験歓迎の求人票をどう読むか

もう一つ見てほしいのが、募集の背景です。増員なのか、欠員の補充なのか。増員なら教える余裕がある場合が多く、欠員の補充だと引き継ぎが急になることがあります🚶

ここまで読んで、経理に絞るかどうかで迷っている場合もあります。事務系の他の職種と比べたい、そもそも転職するかも決めきれていない、という段階です。

そういう段階から相談できるサービスもあって、転職すると決めていなくても使えます。経理に絞るのか、事務系の他の職種も見るのか、そこから一緒に整理する形です。

経理に絞るかどうかから相談できます

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事務系の求人をどれだけ扱っているかはサービスによってかなり差があるので、登録する前に見比べておいてください。

未経験転職におすすめのエージェント比較

よくある質問

簿記3級と2級、どちらを先に取るべきですか?

順番としては3級が先です。2級は3級の内容を前提にしているので、飛ばして始めると遠回りになってしまいます。そのうえで、2級まで取ってから応募するかどうかは別の判断です。未経験が最初に任されるのは手順の決まった毎日の作業なので、3級の範囲で言葉が通じれば入口には立てます。2級は、決算に関わるようになってからでも遅くありません。

経理の求人は実務経験を求めるものが多いのですが、どうすればいいですか?

必須欄と歓迎欄を分けて見てください。実務経験が歓迎欄にあるなら、未経験でも応募できます。加えて、経理アシスタントや経理事務という名前の募集も探してみてください。同じ仕事でも、入口の部分だけを切り出した募集として出ていることがあるからです。それでも数が少ないと感じるなら、いまの会社に経理部門があるか確認して、社内での異動を狙う道も残っています。

経理と一般事務は、何が違うのですか?

扱うものと、締め切りの重さが違います。一般事務は書類作成や電話対応など幅が広く、日によって中身が変わっていきます。経理はお金の動きに絞られる代わりに、月末や決算期に作業が集中します。同じ作業を正確に繰り返すのが苦にならないなら経理が向いていますし、いろいろな用件を並行して回すほうが合うなら一般事務のほうが近いです。

30代でも、未経験から経理に入れますか?

入口は残っています。ただ、20代と同じ見られ方にはなりません。30代だと、前職で何を任されてきたかを具体的に聞かれるので、数字や期限を扱った経験を書けるかどうかで差がつきます。また、小さい会社ほど年齢の幅を取っている場合があるので、大手だけに絞らずに探してみてください。社内異動で経理に移る道も、30代なら現実的です。

まとめ:参考書より先に、触ってきた数字を出す

経理を目指して調べると、簿記2級の話ばかりが出てきます。ですが、その範囲がまとまって必要になるのは、年に一度の決算に近い部分です。

入口は毎日の作業です。伝票を起こす、入金を確認する、経費精算をチェックする。どれも手順が決まっているので、3級の範囲で言葉が通じれば、入口には立てます。

勉強と実務が重なるのは、言葉のところです。会計ソフトの操作や社内のルールは、入ってから教わる部分になります。だから2級は待たなくて大丈夫です。3級まで進めたところで、応募と並行に切り替えてください。

そして応募書類で効くのは、資格の行より、数字を合わせてきた事実のほうです。レジ締め、原価、請求書、材料の数量。合わない日にどう動いたかまで書けば、経理の仕事とつながって見えます。

参考書を開くのは、そのあとで構いません。まずは、いまの仕事で触っている数字を1つ書き出してみてください。