未経験転職が「難しい」と言われる理由|公表データで難易度を分解する
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「未経験からの転職は難しい」——調べ始めると、どの記事にもそう書かれています。
ですが、この言い方は主語が大きすぎます。データを開くと、難しさは職種によってまるで違っていて、上の職種と下の職種では20倍以上の開きがあるからです。同じ「未経験転職」という一語の中に、その差が丸ごと入っているんです。
難しいのは未経験という条件そのものではなく、どの職種を選んだかのほうで、しかも職種の倍率が低くても、選考で差をつける材料は経験以外にも並んでいます。
この記事では、公表されている数字を開いて、職種でどれだけ違うのか、業種ではどうか、面接で実際に見られているのは何か、そして求人倍率という言葉の読み分け方までを整理します。
「難しい」は、主語が大きすぎる
まず、公表されている数字を開いてみます。パーソルキャリアが毎月出している転職求人倍率のレポートです📊
2026年の全体の数字は、4月が2.38倍、5月が2.44倍、6月が2.55倍でした。3か月で0.17ポイント上がっているので、求人の側が少しずつ増えている時期にあたるのですが、この全体の数字だけでは、まだ何も決められません。
ここで一つ、この数字が何を数えているのかを押さえておきます。求職者1人に対して何件の募集があるかという比なので、2.55倍なら1人あたり2.55件の募集がある計算になります。受かりやすさの数字ではありません。採用される確率でも、内定の出やすさでもないんです。
この区別は大事です。倍率が高いということは募集が多いという意味であって応募すれば通るという意味ではありませんし、逆に倍率が低くても、応募した全員が落ちるという話にはなりません。
2.55倍という数字は、あらゆる職種とあらゆる業種を混ぜた平均なので、この1つの数字を見て自分が狙う職種の難易度を判断することはできません。平均というのは、そういう性質のものです。
実際に中身を開くと、職種ごとの数字は上と下でまるで違っていて、高いほうは10倍を超え、低いほうは1倍を割っています。つまり「未経験転職が難しい」という文は、範囲が広すぎて情報を持っていないんです。
それから、数字には出ていない部分も残っています。未経験を受け入れるかどうかは募集ごとの応募資格に書かれていることで、倍率の統計には反映されていないので、倍率はあくまで候補を絞るための入口であって、そこから先は1件ずつ求人票を読むことになります。
ついでに言うと、この記事で使う数字はすべて公表されているものです。使っているのは、パーソルキャリアが毎月出しているレポートと、厚生労働省が毎月出している統計の2つだけで、どこかで見かけた通説や、出どころの分からない割合はいっさい混ぜていません。
出典をたどれる数字だけで組み立てているので、気になったところは元のレポートを開いて確かめられます。図解のすぐ下に出典を並べておきます。
だからこの記事では、主語を小さくしていきます。難しいのはどの職種なのか、どの業種なのか、そして何で判断されているのか。順番に数字で見ていきます。
なお、転職の進め方そのものを最初から知りたい場合は、手順をまとめた記事があるので、そちらと合わせて読んでください。
職種で21.7倍ちがう
数え方は単純な割り算です。1人の求職者に対して何件の募集があるかを表していて、数字が大きいほど求人のほうが多く、小さいほど応募する人のほうが多い状態を指します。
出典:パーソルキャリア「doda転職求人倍率レポート」全国の職種別転職求人倍率(2026年6月)。棒の長さは最も高いエンジニア(IT・通信)の11.06倍を100%として表示しています。
見るのは両端です。上の端と、下の端だけを見てください。エンジニア(IT・通信)が11.06倍、専門職(メディカル)が0.51倍です。この2つを割ると21.7倍になるので、同じ「未経験転職」という言葉の中に、それだけの開きが入っていることになります📉
上の4つは、求職者1人に対して5件以上の募集がある状態です。人が余っているどころか、足りていない側です。人が足りていないので未経験を受け入れる会社も出てきますし、研修を用意したり、入社後に育てる前提で採ったりする動きが起きるのも、たいていこの層で、そこが狙い目になる理由でもあります。
真ん中の企画・管理と営業は3倍前後のところにいて、全体の2.55倍に近いので、極端に入りやすくも入りにくくもない位置です。
下の3つは、逆の並びです。応募する側のほうが多い職種です。販売・サービスが0.73倍、事務・アシスタントが0.53倍、そして最下位が0.51倍で、1件の募集に対して複数の応募が並ぶので、選考で何かの差が必要になります。
この並びを見て気づくのは、上のほうに専門性の高い職種が集まっていることです。エンジニアも専門職も、覚えることが多いぶん人が足りにくく、そのぶん募集が積み上がっていきます。一方で下の3つは、働いている人の数がもともと多い職種なので、動く人も多く、応募が集まりやすくなっています。
つまり倍率の高さは、仕事の良し悪しではありません。出入りの数です。人の出入りと必要とされる人数の関係が、そのまま数字になっているだけです。ここを取り違えて、倍率の高い職種が良い仕事だと読まないでください。
ここで誤解しないでほしいのですが、倍率が低い職種は無理だという話ではありません。求人の数と、自分が受かるかどうかは別の話なので、倍率が低いと分かったなら、応募の数を増やすより、選考で見られるところに手を入れるほうが効きます。
逆に、倍率が高い職種なら未経験でも受かりやすい、とも言えません。この数字は経験者も含めた全体の数字なので、11.06倍の中身がすべて未経験を受け入れる募集というわけではないからです。
業種でも13.1倍ちがう
軸を1つ足します。職種ではなく、業種のほうです。何をする仕事かではなく、どの世界の会社かという分け方です。
| 業種 | 倍率 | どういう状態か |
|---|---|---|
| 人材サービス | 9.66倍 | 募集がもっとも多い。人を採る会社が人を探している |
| コンサルティング | 8.96倍 | 専門性は求められるが、募集の数そのものは多い |
| IT・通信 | 6.83倍 | 職種別のエンジニアと重なる。業界全体で人が足りていない |
| 建設・不動産 | 5.05倍 | 現場から管理まで幅広く募集がある |
| メディア | 3.64倍 | 全体平均より上 |
| メーカー | 2.97倍 | 全体平均に近い |
| 金融 | 2.47倍 | 全体平均に近い |
| エネルギー | 2.18倍 | 全体平均をやや下回る |
| 商社 | 1.70倍 | 応募がやや多い |
| メディカル | 0.87倍 | 1倍を割っている |
| レジャー・外食 | 0.75倍 | 応募する人のほうが多い |
| 小売・流通 | 0.74倍 | 応募する人のほうが多い |
出典:パーソルキャリア「doda転職求人倍率レポート」全国の業種別転職求人倍率(2026年6月)。
上が人材サービスの9.66倍、下が小売・流通の0.74倍です。割ると13.1倍になるので、業種のほうにも大きな開きがあることが分かります🔬
ここで大事なのは、職種と業種が別の軸だということです。同じ営業でも、人材サービスの営業と小売・流通の営業とでは、募集の集まり方がまるで違ってきます。
職種の欄で営業を見ると2.85倍ですが、それは全業種の営業を混ぜた数字なので、実際に応募するときは、どの業種の営業なのかまで見ないと、自分が並ぶ相手の数が見えてきません。
この掛け合わせは、応募先を選ぶときにそのまま使えるはずです。やりたい職種の倍率が低かったとしても、その職種を多く募集している業種を探せば、並ぶ相手の数が変わってくるからです。
表の真ん中あたり、メディアからエネルギーまでの5業種は、全体の2.55倍を挟んだ位置にいます。ここは極端に入りやすくも入りにくくもないので、職種のほうの倍率と、募集の中身を見て判断する層です。
下の3業種で気をつけたいのは、募集が少ないわけではないという点です。レジャー・外食も小売・流通も働いている人の数がもともと多く、求人そのものは各地に出ています。倍率が1倍を割っているのは、動く人の数もそれだけ多いからです。
業種によって年収の伸び方も変わってくるので、業種から選ぶという考え方は、別の記事にまとめました。
なお、この数字は特定の転職サービスに登録されている求人と登録者から計算されたものであって、世の中のすべての求人を数えたものではないので、傾向を見るために使ってください。
見られているのは経験だけではない
では、何で差をつけるのか。倍率の低いところを狙う場合は、そこが次の論点になってきます。ここで、別の調査を開きます。
これまでの経験
44.0%(10人のうち約4.4人)
スキル
40.2%(10人のうち約4.0人)
仕事での工夫
30.2%(10人のうち約3.0人)
学習意欲
26.3%(10人のうち約2.6人)
出典:パーソルキャリア「採用担当者が面接で重視するポイント」 人型10体を100%として、色のついた部分が回答した割合を表しています。
もっとも多く挙がったのが、これまでの経験で44.0%でした。ここだけ見ると、やはり経験が要るのだと感じるかもしれません⚖
ただ、下の3つも近いところに並んでいます。スキルが40.2%、仕事での工夫が30.2%、学習意欲が26.3%。経験が1位ではあるものの、そこだけで決まっているわけではないと読み取れます。
この並びは、棒グラフにすると差が見えにくくなってしまいます。44.0と40.2はほぼ同じ長さになるので、この記事では人の形で並べました。10人のうち4.4人と4.0人と置き換えると、差が0.4人ぶんしかないと分かります。
気をつけたいのが、この4項目の読み方です。経験が44.0%だからといって、残りの人が経験を見ていない、とは言えません。この調査が1つだけ選ぶ形式なのか、複数を選べる形式なのかを確認していないので、引き算をすると意味が変わってしまうからです。
ここで言えるのは、経験が最多で挙がったということと、他の3つもそれに近い位置にあるということだけです。それだけでも、選考が経験だけで決まっているわけではないと分かるはずです。
未経験で応募するなら、下の3つを言葉にできるかどうかが効いてきます。仕事での工夫と学習意欲は、経験の量とは関係なく書ける項目だからです。とくに工夫のほうは、どんな仕事にも必ず一つはあるはずなので、思い出して書き出しておいてください。材料は残っています。
前の職場でやっていた工夫を、応募先の仕事に翻訳する方法は専用の記事にまとめてあります。手が止まるなら、そこから材料を掘ってください。
倍率が0.5倍台の職種を狙うのであれば、なおさらここを整える価値が出てきます。1件の募集に複数の応募が並ぶということは、経験以外の3項目で比べられる場面が増えるという意味でもあるからです。
2つの「求人倍率」を混ぜない
最後に一つだけ、注意しておきたい点があります。並べてきた数字には、読み方に気をつける部分が残っているんです。同じ名前の指標が、実は2種類あることです。名前が同じなので混ざりやすく、混ざったまま読むと結論を間違えます。
一つは、厚生労働省が出している有効求人倍率で、2026年6月の全国・全職種で1.18倍でした。もう一つが、ここまで使ってきたパーソルキャリアの転職求人倍率で、同じ2026年6月が2.55倍です。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」全国・全職種の有効求人倍率(2026年6月)。
同じ月の数字なのに、1.18倍と2.55倍でまるでそろいません。ですが、これはどちらかが間違っているという話ではなく、数えている範囲が違うだけです🪟
厚生労働省のほうは、ハローワークに出された求人と、ハローワークに登録した求職者を数えています。パーソルキャリアのほうは、自社の転職サービスに掲載された求人と、そのサービスに登録した人を数えています。母集団がまるで別なので、そもそも比べられません。
だから、この2つを割ったり引いたりして「差がある」と論じている記事があれば、その記事は読み飛ばして構いません。同じ土俵の数字ではないからです。
使い分け方としては、労働市場全体のゆるやかな動きを見たいときは厚生労働省の数字、転職サービスを使って動く場合の肌感を知りたいときはパーソルキャリアの数字、という形にしてください🧊
この読み分けができるようになると、他のサイトで数字を見たときにも、どちらの話をしているのかが先に分かって慌てなくなります。どこが出した数字で、何を数えたものなのか。この2つを先に確かめるだけで、鵜呑みにせずに読めるようになるはずです。
年代によっても、同じ数字の意味が変わってきます。倍率が高い職種でも、年代によって求められるものは違ってくるので、そこは年代別の記事と合わせて見てください。
何月が有利かという話も同じ読み方で見てほしいところで、出どころをたどれない月の数字を使わずに動き出す時期を決める方法は、別の記事にまとめました。
転職活動はいつ始める? 求人が増える時期と、自分の準備が整う時期
どの数字にも共通する読み方を、最後に1つ置いておきます。いつ時点のものかを必ず確かめることです。求人倍率は毎月動くので、2年前の記事に載っている数字をいまの判断に使うと、ずれたまま進むことになってしまいます。この記事の数字は2026年6月時点のものです。
数字を見たうえで、倍率の低い職種を狙うと決めたなら、準備の仕方も変わってきます。正社員の経験がないところから始める場合は、研修を通して基礎から用意できるサービスもあるので、一人で抱えなくて済みます。フリーターや既卒から正社員を目指す人を対象にしていて、面談から始められます。
正社員の経験がないところから始める方へ
JAIC就職カレッジに無料で相談する※JAIC就職カレッジは、フリーターや既卒など正社員の経験が少ない方を対象にした無料のサービスです。 研修を挟んでから求人を紹介する形なので、狙う職種が決まった段階から使えます。
どこに相談するかで迷うなら、対象年齢や得意な職種を並べた一覧を先に見てください。
よくある質問
倍率が低い職種は、未経験では諦めたほうがいいですか?
諦める必要はありません。倍率が低いというのは、1件の募集に応募が集まりやすいという意味であって、未経験を受け入れないという意味ではないからです。ただ、応募の数を増やすだけでは通りにくいままです。面接で重視される4項目のうち、仕事での工夫と学習意欲は経験の量と関係なく書けるので、そこを整えてから出してください。
倍率が高い職種なら、未経験でも受かりやすいということですか?
そうとは限りません。この数字は経験者も含めた全体のものなので、11.06倍の求人がすべて未経験を受け入れているわけではないからです。倍率が高い職種は人が足りていない状態なので、未経験を育てる余裕のある会社が出てきやすいのは確かですが、募集の中身を1件ずつ見ないと判断できません。倍率は候補を絞る入口として使ってください。
このデータは、未経験者だけを対象にしたものですか?
違います。職種別も業種別も、経験者を含めた求人と求職者の全体で計算されています。未経験だけを取り出した倍率は公表されていないので、この記事でも出していません。つまりここで見えるのは、その職種や業種にどのくらい募集があるかという全体の傾向であって、未経験の採用のされやすさそのものではありません。
業種と職種、どちらを先に決めるべきですか?
職種を先に決めるほうが動きやすいです。やる作業の中身が決まらないと、応募書類に何を書くかも決まらないからです。そのうえで、同じ職種でも業種によって募集の数が変わるので、職種を1つに絞ったあとで業種の一覧を見て、募集の多いところから当たってください。順番を逆にすると、業種は決まったのに何をする仕事か分からない状態になります。
まとめ:難しいのは、全部ではない
未経験転職が難しいという言葉は、範囲が広すぎて中身を持っていません。数字を開けば、難しさは場所によってまるで違うと分かります。
職種では、最上位のエンジニアが11.06倍、最下位の区分が0.51倍で、21.7倍の開きがあります。業種でも人材サービスの9.66倍と小売・流通の0.74倍で、13.1倍ちがいます。
しかも職種と業種は別の軸です。同じ営業でも、どの業種の営業かで並ぶ相手の数が変わります。
面接で重視される項目も、経験が1位ではあるものの44.0%です。スキル、仕事での工夫、学習意欲が近いところに並んでいるので、経験の量だけで決まっているわけではありません。
そして求人倍率という言葉には2種類あって、数えている範囲が違います。混ざったままだと、読み方まで変わってしまいます。
重いのは未経験という条件そのものではなく、いま狙っている場所のほうです。自分がどのあたりに立っているのかは、数字を1つ開けば見えてきます。